当院では、従来より歯の保存を重視し、根の治療にも重点をおいてきましたが、マイクロスコープ(手術用実体顕微鏡)の導入により、治療精度が劇的に向上し、より多くの歯を保存できるようになりました。
虫歯が歯の神経まで感染している場合、歯の神経が入っていた管をきれいにする必要があります。その管を可及的に無菌状態にして、薬をつめる治療を根管治療と言います。
根管とは、歯の根に当たる管状の部分で、先端部分は非常に細く、湾曲していることもあります。根管の中には、歯髄と呼ばれる神経や血管が通っています。
かぶせ物などの土台になる根管の治療は歯を残すために大切な処置ですが、正確に行われないと、細菌が残ってやがて再発し、最悪の場合は抜歯することになります。
また、細菌が体内に回り、感染性心内膜炎や循環器系の病気を引き起こすこともあります。
口の中にある歯の疾患はミクロの世界で、根管はあまりに微細かつ複雑です。根管の形態はすべて異なり、単純な形をしたものから完全な根管治療が行えないほどの複雑な形をしたものまであります。
このため、根管治療は歯科で最も難しい治療のひとつとされます。
保険治療において肉眼で根管治療をする場合、歯科医はこのあたりのはずと手探りで作業します。実はよく見えていない中で治療をしている歯科医がほとんどだと言います。そして、その精度にはおのずと限界がありました。
マイクロスコープの使用により、肉眼の4倍から24倍に拡大してみることが出来るため、より正確でより精密に、そして安全に治療を行うことが出来ます。
細部まで「見える」事により、根管治療の世界が「見える」ものとなりました。
アメリカの歯科事情では、1998年に根管治療の専門医はマイクロスコープを使うことが義務付けられ、現在アメリカの根管治療専門医のもとでは、マイクロスコープが広く普及しています。しかし、日本国内では、マイクロスコープを用いている医院はまだまだ少なく、全体の2〜3%といわれています。
当院ではまた、ラバーダム(治療する歯だけを露出するマスクのようなもの)を用いて治療を行っています。
これを用いることにより、お口の中の細菌や唾液が治療中の歯に入り込まないようにし、感染を防ぎます。
これにより、治癒率が飛躍的に伸びました。
この治療には、時間・手間・費用がかかります。
しかし、歯の価値を考えた場合、十分に価値のあることです。
この価値を十分に理解いただいた上で、治療を受けていただきたいと思います。
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